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169.緑内障④:緑内障の治療薬

緑内障の治療、進行予防の治療方針は一つ、眼圧を下げることです。眼圧を1mmHg下げると、進行を約10%遅らせることができます。
眼圧下降治療には薬物療法(主に点眼薬)、レーザー治療、手術治療があり、今回は緑内障治療に使う点眼薬についてお話します。また、最近増えている配合剤も紹介します。

眼圧を下げるには2つの機序があります。眼圧の原因となる目の中の「房水」の産出を抑えるものと、房水が目の外に排出される排出路の「繊維柱帯」からの排出を促進するものです。
水道から流れる水を抑えるか、下水の排出をよくするかと考えてください。

私が卒業したばかりの頃は、緑内障治療の点眼薬はβ遮断薬と呼ばれるものと、縮瞳薬くらいしかありませんでした。しかし、その後の緑内障治療薬の開発は目覚ましいものがあり、現在は9種類の薬剤とそれらの配合剤(2種類の薬が一つの点眼薬になったもの)の選択肢があります。その中の主なもの5つと配合剤を紹介します。

1)プロスタノイド受容体関連薬

現在、使用頻度が最も高い薬剤です。房水の排出を促進する、いわば下水の排出をよくする薬剤です。1剤で眼圧下降効果が高いのが利点です。副作用として充血、まぶたの皮膚が黒ずむ、まつ毛が伸びるというものがありますが、使用を中止すればもとに戻ります。

2)β遮断薬

交感神経にはα受容体とβ受容体があります。このβ受容体を抑えて房水の産出を減らすことで眼圧を下降させます。この薬剤も非常に眼圧下降作用が強く良い薬ですが、喘息や閉塞性呼吸器疾患、徐脈の人には使えず、注意が必要です。

3)炭酸脱水素酵素阻害薬

房水の産出を抑える薬です。もともと利尿薬として用いられ、点眼薬だけで眼圧が下がらないときに内服薬として用いられていました。ただ手足や唇にしびれ感がでることが多く、また長期に使うと低カリウム血症を起こすことがあり、これが悩みの種でした。点眼薬では、こうした全身への副作用が無く効果の高い薬剤です。

4)交感神経α2作動薬

房水は虹彩の付け根にある毛様体という器官で作られます。毛様体には自律神経である交感神経と副交感神経が分布し、交感神経のβ受容体が抑えられた時、そしてα2受容体が働くと房水の産生が抑えられます。
この薬剤は同時に房水の排出を促進する作用も持っています。
副作用が少ないとともに、視神経の保護作用もあるのではないかと期待されています。

5)ROCK阻害薬

排出路である繊維柱帯を広げ、房水の排出を促進して眼圧を下げます。
副作用に、点眼した直後から約1時間、ほとんどの人が充血します。ただ、1時間を過ぎたころには充血はなくなりますので、使うときは患者さんに十分このことを伝えて使用してもらいます。

6)配合剤

緑内障治療は長期間にわたり、1剤で眼圧が下がればよいのですが2剤、3剤と必要になる患者さんが出てきます。点眼薬の数が増えると、まず患者さんが大変です。点眼薬には防腐剤が含まれるので角膜への負担も増え、角膜に傷がつきやすくなります。
こうした負担を減らすため開発されたのが2剤を一つにした配合剤です。
現在、市場に出ているものは
①ROCK阻害薬+α2作動薬
②プロスタノイド受容体関連薬+β遮断薬
③炭酸脱水酵素阻害薬+β遮断薬
④α2作動薬+β遮断薬
⑤α2作動薬+炭酸脱水酵素阻害薬
があります。

治療の選択肢が広がりとてもありがたいのですが、次から次へ新薬が出てくるので、一覧表を見ながら薬剤を選択するのが大変です。それでも、これからまた有効な薬剤が開発され緑内障患者さんの視力・視野を守っていけるように願っています。



(2024.3.6更新)


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