14. 弱視の治療の話し
まず、おさらいです。弱視には大きく分けて4つの原因がありました。
１） 角膜や水晶体が濁っていて、目のなかに光が入らず、網膜が刺激を受けないため視力が発達しない
２） 斜視があり、外れてしまう目を使わないため視力が発達しない
３） 強い近視、遠視、乱視があり、網膜にピントが合わないため視力が発達しない
４） 片方の目に強い遠視や乱視があり、その目を使わないため視力が発達しない
それでは、一つずつ治療法を説明します。
1) 角膜や水晶体が濁っている場合
角膜の濁りを取ることは非常に難しく、残念ですが、治療はとても困難です。しかし、濁りが片眼の場合は、わざと良い方の目をガーゼ等でふさぎ、視力の悪い方の目だけを使わせて視力の発達を促します。この訓練を健眼遮蔽といいます。
水晶体の濁りは「先天性白内障」という病名です。濁りが軽い場合は、経過を見ます。濁りが強く、光が網膜まで届かない場合は、白内障の手術を行いますが、手術後の訓練がとても大切になります。
白内障で、水晶体を取ってしまったあとは、カメラがレンズを失った状態で強い遠視になります。両眼の白内障の手術をした場合、術後すぐ眼鏡をかけられる子は遠視の眼鏡を、眼鏡をかけることのできない赤ちゃんは遠視のコンタクトレンズを装用します。この眼鏡やコンタクトレンズは、成長過程で検眼で度数を合わせながらも、ずっと使うことになります。
片眼のみの水晶体を取った場合は、その目のみが強い遠視になります。左右の差が強く眼鏡をかけるのは難しく、コンタクトレンズを使います。また、どうしても手術をした目の視力が伸びづらいので、良い方の目をふさぐ健眼遮蔽も行います。遮蔽の時間は視力や、お子さんが我慢できる時間を考え決めていきます。
最近では、水晶体を取った後、水晶体に変わる眼内レンズを入れる手術も行われることがありますが、眼内レンズの長期の安全性はまだ不明です。
2) 斜視の場合
視力や物を立体的に見る力（両眼視機能といいます）が良い子供はそのまま経過を見ます。視力が発達しない場合は、いくつかの治療があります。強い遠視のために内斜視を起こす場合があります。このケースでは、きちんと合った眼鏡をかけてもらうと目の位置がまっすぐになり、経過を見ていきます。
プリズムレンズを入れた眼鏡をかける方法もあります。外斜視の場合はレンズの鼻側の厚みを少し厚くし、内斜視の場合はレンズの耳側の厚みを少し厚くして目の位置を正面に持ってくる方法です。
斜視の手術を行う場合もあります。目には6本の筋肉がついています。そのいずれかを動かして、目の位置を正面に持ってきます。
どの治療法を選ぶかは、視力、両眼視機能、年齢で慎重に選択します。
3) 強い近視、遠視、乱視がある場合
これは、その子供に合った眼鏡をかけてもらうのが、治療法です。私はいつも、本人と親御さんに「これはあなたの目に大切な治療の眼鏡だから、お風呂に入る時と寝る時以外は必ずかけてくださいね。」と言います。4) 片方の目に強い遠視や乱視がある場合
まず、きちんと合った眼鏡を装用します。そのうえで、視力の良い方の目をふさぎ、視力の良くない方の目を使う健眼遮蔽を行います。 １）でも述べましたが、遮蔽の時間は、視力の伸びや、お子さんがどれ位頑張れるかで決めていきます。こぼれ話し ： 最近のアレルギーの検査
今、まさにスギ花粉症まっただなかの方もいらっしゃることかと思います。最近のトピックスをご紹介します。アレルウオッチ涙液IgE: アレルギー反応が起きるとIgEという免疫物質が産生されます。
涙のなかのIgEを測定する検査キットです。1分ほど検査用の細い紙を下まぶたにぶらさげます。涙がだんだん紙を濡らしていきます。これを検査薬に約10分浸すと涙にIgEが増えているかどうかがわかります。これで、アレルギー性結膜炎かどうかということはわかりますが、残念ながら、どんな物に対してアレルギーがあるかまではわかりません。これから、涙でアレルギーの原因物質（抗原）がつきとめられるように、研究がすすんでいますので、期待しています。この検査の良い点は、採血をしないので、痛くないということです。
イムノキャップラピッド： 通常、アレルギーの原因物質をつきとめるには、血液中に抗原に対する抗体が上がっているかで調べます。採血では血液を10mlほど取ることになるのですが、イムノキャップラピッドは、指先に小さな針を刺して少量の血液を取り、20分で結果をみることができます。調べることのできる抗原は、スギ、ヨモギ、カモガヤ、ブタクサ、ダニ、ゴキブリ、ネコ皮屑、イヌ皮屑の8種類です。
川崎市多摩区 ふじえ眼科 院長 藤江敬子 プロフィールはこちら
2011/02/15 更新
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