185.健診で「目の異常」これは何?:②網膜の異常
会社の健康診断や人間ドックで目の異常を指摘されることがあります。何やら難しい漢字や聞いたことがない言葉が並んでいます。これはいったいどんな異常を指摘されたのでしょうか?
今回は眼底の異常=網膜の異常を指摘された時に考えること、注意する点を書きます。
1)網膜静脈分枝閉塞症
健診で眼底写真を撮り、「眼底出血」の判定を受けることがあります。多いのが「網膜静脈分枝閉塞症」です。文字通り、網膜の静脈の細い枝が詰まり、出血する病気です。静脈はたとえれば下水ですので、下水が詰まれば水があふれ、静脈が詰まれば血液があふれます。
この時、治療の分かれ道となるのが、出血が黄斑部を巻き込んでいるかどうかです。右の写真は黄斑部にまで出血が及んだ網膜静脈分枝閉塞症です。この場合は視力の低下が起こるので、患者さんは異常を指摘される前に眼科を受診してくれます。小さい出血で黄斑部にかからない場合は、まず、自覚症状はありません。
治療ですが、小さな出血は、自然治癒することが多いので、経過を見ます。黄斑部に浮腫がでて視力が低下する方は、レーザー治療や、抗VEGF薬というむくみを取る薬を目に注射をします。
原因ですが、多くの場合、動脈硬化で、硬くなった動脈が静脈との交叉部で静脈を押しつぶし、閉塞が起こります。内科を受診し、血圧が高ければ、高血圧の治療をしてもらうようお話します。この病気で、内科を紹介し、糖尿病が見つかった患者さんがいました。全身の病気の予兆として現れることがあるので、要注意です。
2)糖尿病網膜症
糖尿病の三大合併症に糖尿病網膜症があります。初期には、点状出血が現れます。ほとんどの方は、先に高血糖、ヘモグロビンA1cの異常を指摘されて糖尿病の治療が始まりますが、まれに眼底出血で糖尿病がわかることがあります。3)黄斑部異常
黄斑前膜、黄斑円孔、加齢黄斑変性症があります。順にお話します。①黄斑前膜
黄斑部は見る力の9割が集中した大切な部位です。この黄斑部の前に硝子体の異常な膜ができることがあります。この膜が収縮すると、黄斑部を牽引し、黄斑部の健常な形態がそこなわれ視力の低下が起こります。
初期の場合、患者さんに自覚症状が無く、視力検査でも1.0の方がいます。
視力が良く、歪みが無いかたは、経過観察で、悪化した場合、手術となります。
②黄斑円孔
黄斑前膜と同じように硝子体が変化をして、黄斑部を牽引して起こります。ほとんどの方に視力低下と歪みが自覚されるので、健診の前に眼科を受診される場合が多いのですが、完全に孔になっていない「分層円孔」の場合は、健診で指摘され受診となることがあります。
治療は手術です。黄斑円孔の場合は、放置すると視力が低下しますので、硝子体手術ができる病院をご紹介しています。
③加齢黄斑変性症
網膜を栄養する脈絡膜に、新生血管という異常な血管が生まれ引き起こす病気です。黄斑部に浮腫や出血が生じます。
黄斑部の病気は、視力に直結するので、黄斑円孔と同様に、歪みや視力低下を自覚する場合が多いです。
今は、血管内皮増殖因子阻害剤の硝子体注射という治療法があり、治癒も期待できる病気になりました。
指摘されたら眼科を受診してください。
(2025.7.9更新)