多摩区 中野島・登戸 ふじえ眼科

多摩区・ふじえ眼科コラム

多摩区 ふじえ眼科 ホームページはコチラ

187.眼科領域の再生医療

心筋シート、骨や軟骨、いろいろな分野で再生医療が進んでいます。眼科領域では角膜疾患の治療で再生医療が注目され、現在、承認された4種の眼科再生医療製品があります。
今回はこれを紹介します。

角膜は透明であるがゆえに光を通し、網膜に情報を伝えることができます。
角膜が透明性を保つために、角膜周辺の角膜輪部幹細胞が透明な角膜上皮を再生するとともに、角膜の一番内層にある角膜内皮細胞が透明性維持に働いています。

再生医療による角膜疾患治療は、1997年のイタリアの研究から始まります。角膜輪部幹細胞機能不全に対し、自分のもう一方の健康な眼の輪部上皮を採取・培養して患眼に移植する治療が行われ、2015年に「Holoclar」という製剤名で欧州で認可されました。

日本では現在4種の製品が承認・使用されています。順に紹介します。

1)ネピック

「Holoclar」の培養シートからの分離性を改良したもので、角膜輪部幹細胞機能不全に使用されます。2020年に承認されました。自分の健康な側の眼から幹細胞を採取し、リング状の培養シートで培養し、患眼の角膜輪部に移植します。自分の組織であるため、拒絶反応がおこらないメリットがあります。

2)オキュラル

患者さん自身の口腔粘膜組織から採取した細胞を培養した口腔粘膜上皮細胞シートを角膜輪部に移植し、欠損した角膜上皮を修復するものです。2021年に承認されました。

3) サクラシー

胎盤の一部であるヒト羊膜を基質に患者さんの口腔粘膜上皮細胞を培養するものです。羊膜は拒絶反応が起こりにくく、炎症を抑制する性質があります。2022年に承認されました。
スティーブンジョンソン症候群、眼類天疱瘡という病気は、強い炎症のため、眼球と眼瞼が癒着しますが、サクラシーはこうした癒着を伴う重症度の高い角膜上皮細胞疲弊症の治療に期待が持たれています。

4) ビズノバ

先に述べた3剤が角膜輪部幹細胞機能不全の治療であるのに対し、ビズノバは角膜水疱症に用いられ、ドナー由来の角膜内皮細胞を培養したものです。2023年に承認されました。

角膜内皮細胞は角膜の一番内層にあり、角膜を透明に保つ働きをしています。内皮細胞は1ミリ平方メートルに約3,000個ありますが、加齢や眼科手術で減少し、再生しません。内皮細胞が極端に減少すると角膜が水分を排出できず、混濁します。この病気が角膜水疱症です。

従来は角膜移植が行われていましたが、慢性的にドナーは不足しています。この方法では、一人分のドナー角膜から細胞培養で複数の人の内皮細胞を確保することができます。



(2025.9.10更新)


コラムトップへ戻る

多摩区 ふじえ眼科 ホームページはコチラ