多摩区 中野島・登戸 ふじえ眼科

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190.糖尿病と糖尿病網膜症②

先月は糖尿病の話で終わってしまいました。今月は、糖尿病網膜症についてお話します。
今年の「日本の眼科」6月号が特集でした。この中から、新しい検査、治療も含めてまとめてみます。

1) 三大合併症

糖尿病には三大合併症があります。血糖値が高い状態が続くと細い血管が詰まり、虚血状態になり、障害が起こります。糖尿病神経症、糖尿病腎症、そして糖尿病網膜症です。

2)糖尿病網膜症

糖尿病網膜症 網膜は人体の中でも、細い血管(毛細血管)が栄養を与えているので、この血管がつぶれ、虚血になって、網膜症が起こります。網膜は酸素を補うため、新生血管という新しい血管を作ります。この血管がもろく、出血しやすいのです。

糖尿病網膜症には3段階の病期があります。
①単純網膜症
最初の段階で、小さな点状出血が起こります。この段階では自覚症状はありません。半年から1年の定期検査で様子を見ます。

②増殖前網膜症
血管の閉塞、虚血が進み、新生血管が生じます。眼底検査では、右の写真のように、出血と白斑という白い綿状のものが認められます。
この状態になると、悪化を防ぐためのレーザー治療が必要になります。

③増殖網膜症
さらに進行すると、新生血管から出血し、視力低下が起こります。また、増殖膜という膜状の新生物が生じると網膜剝離を起こします。
この段階では、しっかりとレーザー治療をすること、硝子体手術が必要になります。


3) 検査

まず眼底検査を行います。経時的な変化を記録するため、眼底写真で記録を残すことも有用です。

次に増殖前網膜症に進んだ場合は、レーザー治療をするにあたり、虚血の状態を調べることが必要です。従来はフルオロセインという造影剤を注射し、網膜の血管撮影をして虚血部分を検出していました。ただ、フルオロセインは、吐き気をもよおす患者さんや、アレルギー反応を起こす患者さんが出ることが問題でした。
最近は光干渉断層血管撮影という方法も用いられています。この検査は、造影剤を使うことなく、非侵襲的に網膜の微小血管を画像化することができます。

4)治療

①レーザー治療
増殖前網膜症では、レーザー治療を行います。網膜の虚血部分をレーザーで熱凝固し、酸素要求量を減らす処置です。

②硝子体手術
増殖網膜症では、レーザー治療に加え、硝子体手術が必要になる場合があります。増殖膜を取り除き、網膜レーザー治療を完成させます。

③抗血管内皮増殖因子薬(抗VEGF薬)の登場
網膜の中で、最も見る力の高い中心部分を黄斑部と言います。黄斑部に浮腫が出ると、視力の低下、歪みが起こります。糖尿病網膜症で、黄斑部の浮腫をきたしたものを、糖尿病黄斑症と呼びます。難治性でやっかいなものでしたが、抗VEGF薬は、網膜血管の透過性を低下させ浮腫を軽減させる効果があり、硝子体注射として、糖尿病黄斑症の治療に使われるようになりました。
ただ、この薬は薬価が高く、何回か注射が必要になることで、患者さんの負担が多くなります。
現在、日本で承認されている抗VEGF薬は6剤あり、第二世代と言われる薬剤も出てきています。注射の回数を減らせるよう、効果が高く持続性のある薬剤の開発を期待しています。


(2025.12.10更新)


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