角膜⑥:角膜手術の進歩(2023.11/8)NEWS
医学は日々、進歩しています。「日本の眼科」という雑誌の9月号が角膜手術についてでした。最新の角膜手術をご紹介します。
1)角膜移植:全層移植から部分移植へ
角膜移植の対象となる病気として、水疱性角膜症、円錐角膜、角膜瘢痕(怪我や病気の後、角膜が濁った場合)があります。
①全層角膜移植
1990年代までは、角膜移植のほとんどが、角膜全層移植でした。患者さんの角膜を丸く打ち抜き、ドナーの角膜を縫い付けるものです。全層角膜移植では、移植する組織の量が多いため、拒絶反応が約20%の確率で起こります。ステロイドの点眼や免疫抑制剤の内服で防ぎますが、感染症を起こす可能性が高くなります。
また、角膜の全周をナイロン糸で縫合するのですが、ある程度の乱視が生じます。
②部分移植術の登場
2000年代に入ると、新しい手術が始まります。選択的層状角膜移植です。角膜の悪い部分だけを取り換えるという考えです。この手術は、切開創が小さい、移植組織量が少ないので拒絶反応のリスクが減る、縫合する部分が小さいので乱視も起こりづらいといった利点があります。
2)さらに進歩して
①培養上皮細胞シート移植
患者さんの健康な方の眼の角膜輪部(角膜周囲の結膜と接した部分)の角膜上皮細胞を培養して患眼に移植するものです。自分の細胞なので拒絶反応の心配がありません。ただ両眼とも角膜上皮細胞が消滅した患者さんには行うことができません。現在、口腔内粘膜など他の細胞を使って培養、使用できないか研究が進められているそうです。
②レーザー治療
角膜表層の混濁に、エキシマレーザーを使い角膜を切除する手術です。対象になる病気は、角膜の表層に混濁が生じる角膜帯状変性、顆粒状角膜変性、格子状角膜変性などです。
波長193nmのエキシマレーザーを角膜に照射し、角膜切除をおこないます。
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